ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

聖なる黒夜の感想

聖なる黒夜

聖なる黒夜 柴田よしき

 

676ページの分厚い本。文字は小さいし読んでも読んでもページは前に進まない。そう感じたのは冒頭五分の一くらいまでで、その後はこの重厚な物語に一気に引き込まれた。

 

最後の数ページになったときは、この物語が終わってしまうことに寂しささえ覚えた。BL的要素が多分に入っているし、その表現が生々しいから受け付けない人もいると思うが、そんなことを気にするのはもったいないくらいに甘美で悲しい物語です。

 

 悪魔のように悪賢く、美しい男妾あがりのヤクザ…それが、十年振りに麻生の前に現れた山内の姿だった。十年前の気弱なインテリ青年はどこに消えたのか。この十年の間に何が起こったのだ?新宿を牛耳る大暴力団の幹部・韮崎誠一惨殺事件を捜査する麻生は、次第に過去に追い詰められ、因縁の波に翻弄されて暗い闇へとおちていく…。愛と宿命に操られた者たちの果てしなく長い夜。人間の原罪を問うて、深い感動を呼ぶ傑作。

 

山内練という人間。麻生龍太郎との関係。いつまでも付きまとう韮崎誠一の影。この物語には様々な人間が登場しますが、不思議とその相関図を見失うことはありません。過去と現在が交互に語られていますが、その時系列も混乱することはありません。

 

この物語を女性が描いたというのが信じられない。この物語自体が男も女もないような世界ですから、作者自身の性別がどうなどと考えること自体がどうでもいいことなのかもしれません。

 

世の中には悪がある。僕たちの想像すら絶する悪がある。僕はそれに巻き込まれていないからこうして普通の生活が送れているわけで、その悪は近いところでウロウロしているのだと思う。理不尽さもまた同じ。それに触れると怒りとも悲しみとも違う、どん底に突き落とされるなんて表現では軽々しいくらいにどうしようもない気持ちになるのだと思う。

 

愛するという気持ちもまた同じ。好きだとか愛おしいだとかそんな気持ちでは表現できない。それを中心に生きている。頭から離れない。だから突き放す。壊そうとする。気持ちをコントロールできない。気持ちと肉体は別物。それを知ったときの憎しみ。嫉妬。

 

 なんだかよくわからないけど、これが僕の感想。この物語にはいろんな感情が詰まっている。それは僕の想像を絶する。