ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

朝が忙しいワケ

栗

おかげさまで朝が忙しい。なぜなら空から栗が降ってくるから。僕はそれを十個ほど拾って朝から皮を剥く。十個以上それが落ちていることもあるが、拾っていたらキリがないし、一日のうちにそれほど食べられるものでもないので「栗は一日十個まで」というルールにしている。

 

こういうのってなんだか野性的で、我ながら質のいい生活ができているなと思う。はるかむかしの生活であれば、衣食住の全てを自分の力で行わなければいけなかった。野菜を育て、獣を狩り、木の実を拾う。

 

だけども、今の僕はそんなことはできないし、やるつもりもないので会社勤めをし、その対価として賃金を得ている。そうやって得た紙切れと食材を交換して僕は日々の生活を送っている。

 

朝から栗の皮むきに精を出している男は世界中にどのくらいいるのだろう。まずは包丁で鬼皮を剥く。鬼皮っていうのは栗の外側を覆っている固い皮のことね。僕はいつからかこの皮むきができるようになった。頼れる人がいなくなれば自分で頑張るしかない。生きるということはこういうことだ。なんて大層なことでもない。

 

鬼皮を剥き終わったら、渋皮を剥く。栗の実にへばりついているしぶとい皮のことだ。しぶとい皮だから渋皮。というかどうかは知らない。

 

「去年までは上手に剥けていたんだけどなぁ」

 

なぜか今年の僕は渋皮を剥くのが上手ではなかった。こんなに困難な作業ではなかったはずなのに。

 

「あ!」

 

僕は気がついてしまった。去年までの僕はピーラーを使って渋皮を剥いていたのだ。毎年同じことをしているのに今年は今日まで気が付かなかった。だけども気がついたときのあの感動。アハ体験。忘れていたことをただ思い出しただけのことなんだけど。これで明日からの作業は楽になるや。

 

と思っていたら、ピーラーを壊してしまった。あらら。