ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

「だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人」を読んでの感想

だから、居場所が欲しかった

タイの首都バンコクのコールセンターで働く日本人。海外勤務といえば聞こえはいいが、決してそうではない。このコールセンターは人件費削減のために作られた場所。この場所はいわゆる底辺です。 

 

 

本書は五つの章で構成されています。全編通しての印象は決して明るいものではないということ。流れ着いた末の生活。日本で正社員としてのまともな(ブラックではないという意味で)仕事ができ、それなりの給料を得られればこんな生活はしていなかったんじゃないかなぁなんて思います。

 

もしくは日本という国に窮屈さを感じていなければ。もしくは男や女にハマらなければ。

 

コールセンターで働いていることは他人にはあまり知られたくないようです。それくらいこの仕事の印象は悪い。

 

マニュアル通りに淡々とこなすだけの仕事。服装は自由。サンダルに短パンでもOK。女装でもOK。でも、やりがいはないし、給料は低い。それゆえ離職率も以上に高く9割にも達するのだそうです。まあ、これは日本国内でも同じらしいけど。

 

第一章はタイに居場所を見つけた人たちの話。決して裕福な生活はできないが、やりたいことをやってコールセンターの仕事で日々を繋いでいる。タイにずっといるつもりだという。

 

第二章は夜逃げ同然でタイに移住してきた家族の話。郵便局を退社した夫。その仕事に疲れ果てたのだという。

 

妻はタイ人。息子は高校生。息子は日本に残る道もあったのだが、両親を捨てることはできず、一緒にタイに移住する道を選んだ。

 

しかし、通う高校は現地の学校で日本語は通じない。使えるお小遣いも少なく、なにかと文化の違う国にストレスが溜まる。貧困の連鎖から逃れようと必死に勉強する。

 

第三章は飛ばして、第四章はゴーゴーバーにハマる女の話。タイは性に開放的で夜遊びにハマる日本人女性は多いのだそう。

 

で、姉妹揃ってゴーゴーバーにハマって、お姉さんはゴーゴーボーイと結婚もして、まあ結局別れちゃうんですけど。なんだか楽しそう。人間の感情って面倒なものだから実際には大変なんでしょうけど。

 

最後の第五章は「日陰の存在」というタイトルがついています。LGBTの人たちの話。LGBTに関しては日本よりは寛大なので、そこに居場所を求めていく人が多いのだとか。性適合手術をタイで受ける人多いっていいますもんね。

 

と、まあ、いろいろな人が登場しますが、実際には取材は大変だったようで。コールセンターという仕事の地位は低く、自慢できるようなものではないから話したがらない。そういう場所を日本企業が作っちゃったんですねぇ。

 

でも、そこで働くしかない人たちもいるわけで。「自分で選んだ道じゃない?」っていってしまえばそれまでなんですが、選ばざるを得なかったんだろうと僕は思うのです。

 

だってさ、やりがいはないわ、給料は低いわなんてイヤだもの。僕はたまたま運がよくて今の仕事ができてるってだけだ。