ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

ゴミだと思っていたモノが役に立った日

森

なにもない祝日の一日。今日は枝にひっかかってとれなくなった高枝チェーンソーの救出を試みることにする(詳細は11月2日の記事参照)。

 

雨に濡れて壊れていないだろうか?心配だ。引っかかっている枝の半分以上は切断されている。ということは、ロープを引っ掛けて下から引っ張れば、その力で枝は折れるのではないだろうか?よし、そうしよう。

 

手頃なロープは、、、ない。日常生活にロープが必要になることなどなく、手頃なロープは見つからない。やわな荷造りヒモでも大丈夫だろうか?大丈夫もなにもそれしかないのだからしかたがない。荷造りヒモの端をガムテープにくくりつけ重しにする。それを目的の枝に向かって投げる。

 

、、、なかなか引っかからない。自分のコントロールのなさを恨む。何度かのチャレンジの後、ようやくヒモを枝に引っ掛けることができた。引っ掛かればこちらのもの。

 

あとは下から引っ張って枝をへし折るのみ、、、へし折るのみ、、、、へし折る、、、無理だ。どう考えても荷造りヒモの耐久性がなさすぎる。まるで自分自身のような耐久性のなさである。

 

いったん諦めることにする。諦めているふりをすれば、そのうちなにかいいアイデアが浮かぶのではないか?その間は庭の掃除をすることにしよう。

 

夏の間に成長しきった雑草は冬を前に力がない。そうやって枯れたふりをしていてもな、知ってるんだぞ。来年の梅雨を終えたころには全力で庭を覆い付くしてしまうことを。

 

その時を黙々と待っているんだろ?オレのズボンのすそに種をくっ付けて、その種をまき散らして分身の術のごとく勢力拡大を狙っているんだろ。そんなやつはな、根こそぎむしり取ってやるんだ。・・・枝をへし折るいいアイデアが浮かばない。庭は少しずつきれいになっているから、まあいい。

 

そうだ、先週、燃えないゴミの袋に入れっぱなしにしておいた延長コードがあったはずだ。玄関ライト用に設置してあった延長コード。もう使わなくなったから捨てようと思っていたところだった。最後の役目がロープ代わりだなんて。彼は延長コードではなくロープとして生まれてくるはずだったのかもしれない。生まれ変わったら、ちゃんとしたロープになるんだぞ。

 

さっそくゴミ袋から延長コードを取り出す。延長コードというだけあって長さ的には十分だ。荷造りヒモのときと同じように目的の枝に向かって投げる。やはり自分のコントロールのなさを恨む。今日何度めの恨み節だろう。同じことを何度も繰り返すとそのうち要領を得るようで、なんとか延長コードを枝に引っ掛けることができた。

 

これからへし折られるんだということを枝に気づかれないうちにロープを持ち、下からぐっと力をかける。全体重をかける。、、、思ったよりも手ごわい。引っかかっているロープを枝先に少しずつ移動させる。枝の根元側より枝先側の方が力がかかりやすいからだ。

 

枝先に移動させたロープに改めて力を込める。枝全体がワサワサと動き出す。その動きを反動にし更に揺さぶりをかける。彼は動揺しはじめた。もうすぐへし折られることに気付いたのだ。このチャンスを逃すまいと、さらに揺さぶる。揺さぶる。揺さぶる。

 

メキッ!!!完全には枝は折れてないが確実にダメージを与えられたことが延長コードを伝わって感じられる。彼はこれでわたしの高枝チェーンソーを開放してくれるはずだ。わたしは恐る恐る高枝チェーンソーに手をかける。彼にばれないように。そっと。そっと。

 

わたしは勝利を確信した。高枝チェーンソーをこの手に再び取り戻すことができたのだ。勝利の瞬間。諦めなかったわたしの勝ちだ。しかし、彼は未練がましく幹にしがみついている。まあ、いい。武士の情けだ。そのままにしておいてやろう。そのうちに朽ち果てるだろうがな。

 

格闘の末、わたしに残ったのは翌日の筋肉痛だった。