食事のマナーに対するコンプレックス
僕には子どもの頃から食事のマナーに対するコンプレックスがあります。特に父親の影響が大きかった。子どもに対しては厳しい人でした。
箸の持ち方をきちんとしなさい。
肘をついて食べてはいけません。
茶碗は必ず手に持ちなさい。
米粒はひとつぶも残してはいけません。
これらの食に対する教育は今でもわたしの根底にあり、いい教育をしてもらったなと感謝しています。
しかし、父自身はというと、あまり褒められたものではありませんでした。外食をしたときなどは決まって店員さんに「ハロー、ハロー」「ニーハオ」とわけもわからず外国語もどきで話しかけるんがとても恥ずかしく、外食をするのがとてもイヤでした。父としては楽しかったのでしょう。
子どもの頃に近所にちょっとオシャレなレストランができました。オープン直後に家族で行きました。
コース料理を選んだのだと思います。まずはサラダが運ばれてきました。両親とも手をつけなかったので、わたしも手をつけずに次の料理が運ばれてくるのを待ちました。
次の料理が運ばれてきたとき、手つかずになっているサラダを見て、クスッと店員さんが笑いました。なにか間違っているんだろうな。子どもながらにそう思いました。
その後も両親は運ばれてきた料理の順番に関わらず、自分の食べたい順番に食べていました。テーブルの上はお皿でいっぱいです。そんな光景が記憶に残っています。
先日、日ごろからよくして頂いている方と食事に行きました。
「わたしって、子どものころからわりといいお店に連れて行って貰ってて、味も知ってるんですよ。マナー悪い人とかみると、もうね、うんざりしちゃう。あ、わたし、こんなに食べきれないから、ほら、お皿貸して」
そう言いながら、寄せ箸をしたんです。ちょっと引きましたね。寄せ箸しているのを見たのってはじめてだったんです。あまり感じのいい行為ではありませんね。
僕は未だにナイフとフォークが沢山並んでいるテーブルを見ると、「うわ、どうしよう」と軽くパニくります。内側から使ったらいいの?外側から使ったらいいの?わけがわからなくなります。そして、軽くまわりの様子を伺いながら、外側のナイフとフォークをそっと手にします。
最近では食べ方がわからなかったら、恥ずかしがらずに聞くようにしています。知ったかぶりして妙な食べ方をするよりも余程いいです。知らないものは仕方がないですよね。
父はクチャクチャと音を立てながら食べる人でした。会社にもそういう人がいます。口を閉じればいいものを。気にならないのでしょうね。
そんな感じでわたし自身はマナーにうるさいというよりも、マナー自体がコンプレックスになってしまっているのだと思います。みっともない食べ方だなぁとだけは思われたくないのです。