ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

治らない歯の痛みの原因

歯

治療した歯がずっと痛かった。三月の定期健診のときに「奥歯に虫歯がありますね」と言われ治療をした。特に痛くもなかったのだけれど、虫歯はどうせ放っておいても治ることはないから早いうちに治療しておこうと決断した。痛くもない歯を削られるのはどうにも解せないが、自分で決めたのだから仕方がない。「虫歯を削って被せ物をして終わり」のはずだった。

 

「神経見えてきちゃったんで神経抜きますね」

 

「誰が神経見えるまで削れって言った?」と思ったのだが、そんなことを言えるはずもなく先生の言われるままに神経を抜かれた。治療直後はとても安定していた。しかし二、三週間くらいすると時折思い出したように痛み出す。噛むと痛いから反対側の歯で食事を摂るようにした。

 

「次の定期健診まであと三週間だからそのときに見てもらおう」

 

そう思いしばらく我慢した。一方だけの歯で噛むとバランスが悪くなるのか口の内側を噛んでしまう。口の中の筋肉のバランスが悪いのだろうと思い、舌を使ってグリグリと口の内側のマッサージをする。これが意外と効果がある。そうやって歯の痛さを誤魔化してきた。

 

しかし、定期健診まであと三日の段階になって急激に歯が痛み出した。我慢できないくらいの痛さ。できるだけ痛み止めのお世話にはなりたくないところだが、この痛みには耐えられない。耐えたところで「痛みに耐えてよく頑張った。感動した」と褒めてくれる人などいない。ロキソニンを飲む。痛みが治まる。それを繰り返して三日間を過ごした。

 

「あと半日我慢すれば歯医者で見てもらえる」と思いながら仕事をしていた最中にも急激に歯が痛くなる。仕事にならない。歯が痛いと自然と口が開く。顔が歪む。仕事もしないで口を開けてボーっとしていると「この給料泥棒め」と思われそうだが気にしている余裕などない。慌ててロキソニンを飲む。そもそもこの歯は痛くなかったんだ。痛くも歯を削ったばかりに逆に痛くなるだなんて。クソ歯医者め。と思うのだが、そのクソ歯医者を頼りにするしかない。

 

僕は予定通り仕事帰りにクソ医者の元へ向かった。三日前から急激に歯が痛み出したことを伝える。当初の予定であった歯石取りが終わり、とりあえずレントゲンを撮る。膿んでいる様子もないし、神経の部分にもきちんと薬が詰まっているらしい。レントゲン写真を見ると確かにキレイなものだ。痛むはずの歯をコンコンと叩く。

 

「痛いですか?」

 

痛くない。あれ?さっきまでは確かに痛かったのに。堪えられないくらいに痛かったのに。何度かコンコンと歯を叩かれるが、何度やっても痛くない。

 

「上顎洞炎でも痛くなる可能性はあります。これは歯医者じゃ治せなくて耳鼻科になります。一応、CT撮ってみますか?」

 

CTなんて撮ったら、また余計な金がかかるなとケチなことを一瞬考えたが、可能性があるのなら調べてもらおう。原因不明は不安だ。結果、上顎洞炎の可能性もなし。原因不明のままだ。しかし、膿んでいるわけでも歯も治療による痛みでもないことはわかった。それだけでも少し安心だ。するとどうだろう。不思議なことに痛みは治まった。結局、原因はなんだったのだろう?不明だ。