ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

頼むから死なないで -チェーン・ポイズンの感想-

チェーン・ポイズン

チェーン・ポイズン  本多 孝好

 

「その自殺、一年待ってもらえませんか?」三人の自殺志願者にもたらされた“死のセールスマン”からの劇薬メッセージ。死に向かう者にのみ見えるミステリアスな希望を描いた心揺さぶる長編小説!

本当に死ぬ気なら、一年待ちませんか? 人気絶頂のバイオリニスト、陰惨な事件の被害者家族、三十代のOL。三つの自殺に不思議な関連性を見出した週刊誌記者・原田は、“死のセールスマン”が運んだらしき、謎のメッセージの存在を知る。「命の取り引き」がもたらす意外な結末とは? 心揺さぶるミステリアス長編。

 

単なるミステリー小説だと思っていました。実は生きること、そして死ぬことにについて考えさせられる一冊です。冒頭から引き込まれます。

 

「頼むから死なないで。結果はわかってるんだけど。でも、お願いだから生きて」

 

そう思いながら読み続けました。このような気持ちになりながら読んだのは本書がはじめてです。ミステリーというのは死んで当たり前みたいなところがありますよね。死ぬことの意味を見つけ出し、その日から一年間、死ぬことだけを生きがいとし生活する。これでやっと死ねる。死ぬことで生きる意味を見出せる。その気持ちはわからないくもない。だけども、わかっちゃいけない。

 

死のうとするのには、それぞれの理由があります。多くは絶望なのでしょうか。ゆえの自殺。ふと後押ししてくれるだけかがいれば、簡単に一歩を踏み出せる。後押ししようとする人に悪意があるとは限らない。それが正だと信じて、善意でもって背中を押す人もいる。なんの感情も持たずにそれをする人もいる。

 

人は誰しも死ぬ。わたしも死ぬし、あなたも死ぬ。いずれ死ぬのだから、そう急がなくもいいじゃない。

 

本書の中に出てきた言葉です。焦ることはない。その時はいずれやってくるのだから。今日も明日も変わらなくて、自分ひとりがいなくなっても誰も困らないかもしれないけど、だからといって終わらせてしまうのはもったいない。「死」以外の別の場所に逃げたらいい。

 

読書感想にはなっていませんがそんなことを考えさせられる本です。機会があれば是非に。

 

チェーン・ポイズン (講談社文庫)

チェーン・ポイズン (講談社文庫)