ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

使い切る大切さを雑巾から学ぶ

雑巾

僕はこの記事の通り半年前に雑巾を縫った。はじめて縫った雑巾は僕の手のひらくらいの大きさ。雑巾としては少し小さかったが、その分使い勝手はよかった。雑巾を片手にもって、車のワイパーのように手を動かして床を拭く。家のすべての床を毎日磨くのは時間がかかるので日替わりで磨いていた。そして半年後の今日、雑巾に穴が開いた。

 

雑巾

 

少し前から雑巾をギュッと絞るたびにきしんでいた。そりゃ毎日毎日、僕にこってりと絞られているのだから穴も空くだろう。汚れた雑巾を洗わないわけにはいかないし、水浸しのそれを絞らないわけにもいかない。

 

雑巾の前職はお風呂で使うタオルだった。その時代にも彼は絞られまくり穴が空いた。そして、雑巾に転職した。穴の空いた部分を内側にして縫う。

 

一枚のタオルから二枚の雑巾が生まれた。はじめて縫ったそれはとても愛おしかった。縫い目はとても大雑把で早く完成させようという焦りが現れていた。じゅうぶんに時間はあったはずなのに、僕はなにを焦っていたのだろうか。

 

タオルとして使いきり、雑巾としても使いきった。最後はトイレ掃除用として使おう。トイレの隅から隅までをこれで拭き、生涯をまっとうしてもらおう。タオルとして五年、雑巾として半年。長く現役として頑張ってくれた。

 

さて、次の雑巾を出そう。雑巾はもう一枚ある。最初に縫ったそれは少し小さかったので、次に縫った雑巾は大きめにした。

 

雑巾

  

「でかっ」

 

比べるとでかい。厚さもある。ずっしりとしている。床を拭くために水に浸ける。水分を存分に吸収したそれは実に絞りにくい。

 

「少し大きすぎたかなぁ」

 

一瞬後悔した。でも大丈夫。きっと僕の手に馴染んでいないだけだ。ギュッと絞る。僕の手のひら二つ分の大さの雑巾は雑巾掛けするのにちょうどよさそう。

 

タッタッタッタッ。

 

勢いをつけて部屋の端から端まで雑巾掛けする。雑巾賭けは早く終わるぶん疲れる。いい運動になる。新品の雑巾は汚れが目立つ。それほど汚れてないように見える床だが、新品の雑巾にツーッとホコリの線が浮かぶ。雑巾を半分に折り畳んで再び雑巾掛けをする。ホコリの線がもう一本現れる。そのたびに床はきれいになる。

 

「よし、今日もきれい」

 

自分に気合いを入れる出勤前のOLのように僕はそうつぶやき、朝の準備を終えた。