ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

向田理髪店の感想 ありふれた毎日

向田理髪店

 向田理髪店 奥田英朗

 

寂れた田舎町の話。昔は賑わっていた炭鉱の町。明るい将来など見えるはずもなく。そんな現実を受け入れざるを得ない人。それでもなお、なにかを取り戻そう、この町を盛り上げようとする人。田舎の閉塞感。その反面のあたたかい交流。そんな物語です。

 

向田理髪店

 

向田理髪店

この町の将来に希望を見いだせない向田理髪店の主人。箱物行政を行った結果、残ったのは使われもしない巨大な建造物のみ。そんなことで町が蘇るはずもなく。そんな現実を見てきたからそこの諦め。なにをやったってダメなんだ。このまま沈んでいってもいいじゃないか。それでも必死にもがこうとする人もいて。どうにもならないのが現実。

 

祭りのあと

 風呂場で倒れた近所の旦那さん。協力してなんとか病院に運ぼうとする人々。顔見知りであるご近所さんはこんなときに頼りになる。倒れた旦那は予断を許さない状況。だが、そのときがくるのが今夜なのか十日後なのか。見えない先にどうすることもできない家族。やはり女性は強かったというお話。

 

中国からの花嫁

結婚できない男が中国に嫁探しに行く。日本に嫁いできた中国の花嫁。それを恥じる男。きっとまわりは「中国に嫁を買いに行ったかわいそうな男」として自分を見ているに違いない。そう思っているのは本人だけで…。

 

小さなスナック

小さな町にもうひとつスナックができた。美人ママさんのもとに通う男たち。それをよく思わない女たち。一時の夢じゃないか。それくらいの楽しみがあってもいいじゃないか。

 

赤い雪

この町が映画の舞台に選ばれた。そうなれば金が動く。「俺の旅館に泊まらせろ」「私のところで弁当をつくらせろ」この機会を逃してなるものかと自分の権利を主張する人々。

 

できあがった映画が気に入らなければ文句をいい、その映画が賞をとれば手のひらを返し。大変なのは間に挟まれた調整役。僕も仕事上は調整役なんだよなぁ。大変だよなぁ。

 

逃亡者

町の出身者が全国ニュースになるような事件の主犯となり指名手配される。噂をするご近所。集まるマスコミ。どこで間違ってしまったのか。最後に詫びを入れたい相手はやはり…。