否定された人の気持ち
「わたしが以前の職場で作成した仕組みがあるんで、それで作り直しますよ」
そういったのは僕の前任者のKさん。僕が構築し終わったシステムを気に入らないからといって作り直すというのだ。このシステムの当初の担当者はKさん自身。人間関係がうまくいかないからといって途中で放棄した。そして僕に押し付けた。
僕は稼動まで漕ぎつけた。Kさんは途中で投げ出した。それなのにケチをつけるなんて、どこまで人をバカにすれば気がすむんだ。
多分、本人は親切のつもりでやっている。自分がどれだけ罪深いことをしているか気づきもしない。
ちなみに僕が作ったシステムは100%要望を満たすものではないものの、まあまあ安定稼動している。
「手紙出したいんでぇ、宛名書いてもらえません?あたし、字へたなんですよぉ」
「あ、うん。いいですよ。僕も下手だけど」
カキカキ…
「はい、どうぞ」
「ふっ(半笑い)、ホントに下手ですね」
消し消し…
「やっぱり、あたしが書きますね」
そんな風に目の前で僕が書いたものを消されて、書き直されている感じ。だったら最初からお前が書けよ!
さすがに人が耕して整地した畑に勝手に踏み込んで荒らすなんてことは許さない。お前はイノシシか。ウリ坊のときはかわいかったはずなのに。
彼が作った別のシステムの運用メンテナンスを僕は今している。引継ぎなんてものはなく、仕様書すらまともにない。
仕方がないのでトラブったら彼の元に教えてもらいにいく。ご機嫌をそこねてはいけないので「よろしくお願いします」と下手にでる。今後はそんな対応はできそうにもない。
彼が作成したシステムを見て思うことがある。なぜこんな面倒でマニアックな仕組みにしたのだろうと。
彼にICTの知識があるのは認める。たぶん、そういう仕組みに対しては右にできる人はいない。だから誰も彼に口出しできない。
そして彼は独りよがりなシステムを構築していく。まさに裸の王様。
人にはそれぞれやり方というものがある。同じ表計算ソフトでもExcel、Googleスプレッドシート、LibreOfficeと様々な種類があって、それぞれ一長一短ある。どれが一番優れているなんて価値観は人によって違う。
僕は彼が作ったシステムを決していいとは思っていないが、だからといって否定するつもりはない。それで順調に業務はまわっているわけだし。
僕が作ったシステムだって、それで業務がまわっているんだから否定しないで欲しい。否定するくらいなら最初から投げ出さないで欲しい。やらない人間にとやかく言われたくない。