ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

有吉佐和子「複合汚染」を読んでの感想

複合汚染

有吉佐和子の「複合汚染」という小説は1975年発行なので、今から40年以上も前の小説。いちおう小説という形らしいが、内容はドキュメンタリー。

 

公害先進国日本だった頃の環境問題について述べている。主には食品問題。農薬を大量に使っていた昔の日本。「水銀を食べる」という表現は実におそろしい。水俣病という病気があったことは社会の教科書で勉強した。工場から排出される排水中に含まれる水銀がその原因。悪いのは工場だけだと思っていた。

 

しかし、今からたった数十年前の日本では農薬として水銀を空中から散布していたらしい。直接口にする農作物を水銀まみれにしていただなんて、僕にとっては衝撃の事実だった。

 

「長生きしたいとは思わないが、苦しみたくない」

 

僕が食べるものに気を使っている理由はまさにこれ。食品添加物や農薬によって神経がやられたり、体に悪いものを蓄積して原因不明の体調不良に悩まされたり。そういうことをできるだけ防ぎたいのだ。

 

寝たきりになるなんてまっぴら。治療と称して薬付けなんかにされたくない。入院して体にメスを入れられたくない。なにより人に迷惑をかけたくない。僕は最後まで自分で自分の面倒をみられるようにしっかりと生きたい。

 

複合汚染

 

複合汚染についての研究結果が出るまでに早くて50年かかると書かれているのが本書。42年前に出版されたのだから、まだ結果は出ていないはず。というよりも複合汚染が人体にどれだけ影響を与えるかなんて複雑すぎて誰にも断言できないと思う。

 

原因不明の気だるさにおそわれれば、うつ病だと言われるし、その原因はストレスだといわれるし。原因がわからなければ、とりあえずストレス。本当にそうなのだろうか?

 

食べ物が腐らないというのはありがたいようで、よく考えればこわい話だ。有吉佐和子は自宅の米に虫がわかないのに疑問を感じた。海外であっという間に腐ってしまったレモンを見て「レモンって腐るものなのか」と驚いた。僕のうちでも米に虫がわいたことなんてない。 レモンやオレンジは防腐剤まみれなので買うことはない。

 

 「形がよくて、色がよくて、大きくて安いリンゴがほしいと言われるんですよ。どうして味がよくて、栄養があって、安全なリンゴがほしいと言ってくれないんでしょうねぇ」

 

農家は嘆く。作り手としては「きちんとしたもの」を作りたいのだろう。僕だって「きちんとした仕事」をしたいって思うくらいだし。だけども、それを消費者やお上は望んでいない。売れないから作らない。安いことの代償が健康だとしたら。安物買いの健康失い。

 

アメリカでスイス製チーズにDDTが入っていることが発覚し突き返したという話。国民の安全を守るために汚染されたチーズを輸入するわけにはいかない、と。スイスではDDTなど使っていないから、そんなはずはないという。しかし結果は黒。原因を調べた結果、アメリカから輸入した乳牛用の肥料にDDTが入っていたのである。

 

食や健康に興味のある人だったら是非読んでみるといいと思う。原因不明の病気に悩まされたくないし、誰かに迷惑をかける最後を送りたくない。そのためには早い段階から、こうしたことを考えることだと思う。思考停止はいけない。四十年以上も前に発行されたのだが、古さなんて全く感じない。ということは今も根本はかわっていないとうことか。