NEWシネマ歌舞伎「四谷怪談」を観ての感想
NEWシネマ歌舞伎とあるくらいだから、今までのシネマ歌舞伎とは違う。カメラワークが斬新で、生の舞台とも違う映像になっている。たまにNHKで放送している舞台のそれとは全然違うからね。ちなみに以前にみた「三人吉三」も同じくNEWシネマ歌舞伎だった。
四谷怪談といえば、毒薬を飲まされて顔がただれてしまったお岩さんを思い浮かべると思う。たいていの場合、その事件を中心に物語りは描かれるが、今回に限ってはそうではない。数多くある人間の欲の結果のひとつとしてこの場面がある。
実際の舞台はどうだったのだろうかと気になる。お岩さんの髪すきの場面はどうだったのだろうか。映画ではお岩さんの死にいたる場面と夫の伊右衛門が欲に負け、お岩を裏切り自らだけがなにかを手に入れようとする場面が重なり合い描かれる。
映画の後半に少しだけ描かれる忠臣蔵外伝ともいえる場面。小汐田又之丞は討ち入りに参加できるのか。演じたのは首藤康之さんというバレエダンサーらしい。映画をみて気になっていたので調べてみました。
演出はとても斬新でアート的。歌舞伎なのにスーツ姿でビジネスカバンを持ったサラリーマンが登場する。なにをするでもなく、ただスタスタと通りすぎる。これは今も昔も人の欲望はかわらないということを演出しているらしい。
川の流れも人々が演出している。サラリーマンたちが寝そべってウネウネと動いている。水の音もセリフと化している。
もとになった歌舞伎はコクーン歌舞伎といって、渋谷のシアターコクーンで二年に一度くらいのペースで上演されています。チケットは争奪戦でなかなか手に入らない。
僕は以前に一度だけ劇場でみたことがありますが、そのときも補助席でした。補助席といっても劇場のど真ん中。けっこういい席でした。
そんな舞台が映画館で誰でもみられるのですから逃す手はないでしょう。秋の日の一日に是非どうぞ。