ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

歌舞伎となったマハーバーラタ戦記、観劇しての感想

マハーバーラタ

人間の世界から争いをなくすにはどうしたらいいのだ。会議を開く神々の姿から物語ははじまる。そこで太陽神は考えた。

 

「俺がさぁ、汲手姫に子供を産ませればさぁ、その子がきっと平和をもたらせてくれるよ、だって俺の子だもの」

 

そして汲手姫(くんてぃひめ)を勝手に孕ませてしまう。時間の都合で気がつけば汲手姫の両の腕には生まれた子が。

 

「こんなどこの子だか分からぬような子を育てる義理なんてありませんわ。わたくし、まだ若いし遊びたいんですもの。あぁ、そうだ、この子は川に流しちゃいましょう」

 

どんぶらこと流れていった子は、当然の如く子どものない年寄り夫婦に拾われます。もちろん自分の子として育てます。子どもは本当の両親のことなど知るよしもありません。その子はカルナといいます。漢字で書くと面倒なのでカタカナ表記です。

 

青年になったカルナは神のお告げを聞きます。「お前は世界を救う勇者だ」と。まるでドラクエです。疑うことを知らない真面目な勇者カルナは修行へと旅立ちます。ますますドラクエです。

 

汲手姫は実は帝釈天の子も産んでいました。その名はアルジュラ。アルジュラには五人の兄弟がいます。五人兄弟は王権争いに巻き込まれます。

 

その敵はヅルヨウダ王女とその弟、ドウフシャサナ王子のふたり。そのふたりに付くのはカルナ。ここに兄弟同士の戦いがはじまります。お互いに兄弟だと知ってはいるものの、相手は知らぬと思い込んでいる。そして、戦いの末に...。

 

マハーバーラタ

 

ざっくりとこんな物語です。もちろん、こんなに軽い話ではありません。世界三大叙事詩ときいて難しいお話かと思いきや、全くそんなことはありません。セリフもわかりやすいし、飽きることもない。

 

屏風を背景にして次々と場面がかわる。三幕目の争いの場面などはスーパー歌舞伎「新三国志」を思わせます。物語にも衣装にも演出にも品があって、とても素晴らしいです。かといって堅すぎず、ちゃんと笑いをとる場面もある。

 

マハーバーラタ


なぜ争いはおこるのだ。それは人に執着心があるからだ。土地が欲しい。名誉が欲しい。人よりしあわせになりたい。それがあるから争いはおきるのだ。神は最後にそういった。しかしだな、金ぴか衣装に身を包んで、上から人々を見下ろしている君たちに言われたくないのだよ。

 

争いが起きなくなった世の中をみて神はいう。「さて、わしは寝て過ごすか」と。寝ていても生活できるのは神だけだ。人は毎日苦労して働いているんだ。人間の苦労を知るがよい。みなが神になれば争いは減るかもな。まさか神同士が喧嘩しているなんてことはないよなぁ?

 

とてもいい舞台を観ることができました。是非とも再演をしていただきたい。チケット代は通常より高めですが、その価値はあると思います。