「和菓子のアン」の感想 上生菓子が食べたくなる一冊
「和菓子のアン」はデパ地下にある和菓子屋「みつ屋」を舞台にした物語。主人公は特に将来も決めていない十八歳の梅本杏子、アンちゃん。なんとなく決めたアルバイト先がみつ屋だ。
みつ屋の店員はみんな個性的。株に熱中すると豹変する椿店長。和菓子職人を目指している乙女ちっくな立花さん。元ヤンの同級生、桜井さん。
和菓子が食べたくなる小説ってのは珍しい。特に上生菓子には名前、姿かたちの全てに意味がある。歴史がある。これと同じものを昔の茶人なども口にしていたかと思うと、なんとか利休も身近に感じられるよう。
跳ね月という和菓子がある
搗かずに作るから、つきしらず
「月」という漢字をはめて「月知らず」
月が見えない方向だということで「北窓」と呼ばれる
「着き」をはめれば「着き知らず」
ひいてはいつ着いたかわからないから「夜舟」
搗いてる音がしないから隣にもばれないってことで「隣知らず」
まさに名前の七変化
お菓子の名前というのは駄洒落とか言葉あそびみたいなものが多いんだって。そういうのを知ったら、きっと面白い。見た目がかわいいとか美味しいとか当たり前の感想ではなく、さらにその先。僕が求めている粋がここにもあるみたい。
舞台はデパートだから様々なできごとが起こり、さまざまなお客様がやってくる。和菓子の意味を知っている人、値段だけで選ぶ人、単なるクレーマー。乙女な立花さんの師匠。
和菓子には季節がある。月がきれいなころ。盆、正月。旧暦も大切にしている。僕などは旧暦なんて気にしたことないや。
人生のイベントにもついてまわる。子どもが生まれて紅白饅頭。亡くなって葬式饅頭。今じゃ逆に珍しいんだろうけど。
この正月にはちょっといい上生菓子を買ってみようと思う。その意味を調べて味わって。
この物語には続きがあるようです。それもちょっと楽しみ。