こわれてしまいそうなもの
僕は「はかない」「あやうい」ものが好きなんだなぁと思いました。まあ、これはたぶんにさっき読み終えたばかりの本の影響を受けているんですけどね。
あやう‐い
あやふい 【危うい】
1. 物や事の存立がおびやかされ、くずれ去りそうな(心を痛める)状態だ。
2. もう少しというわずかの差で。
絶妙なバランスでそれは保たれていて、少しでもバランスを崩すと、あっという間にそれは落っこちて、パリンと粉々に砕け散ってしまうような。
例えばね、中三の夏。まあ、中二でもいいんですけどね。大人でもなく子どもでもない時代。その中間。あやういバランスで成り立っている夏があるわけですよ。
あるものはそれに気がつかないように必死に勉強をする。親のいうことにしたがって。そうすれば余計なことを考えないでもすむし、とりあえず今日という日を乗り越えられるから。
明日のことは明日考える。でも、やっぱりその大半は今日と同じで親のいうことにしたがってその日を乗り越える。
自分でも気がつかないあいだにそのバランスは崩れてしまって、でも、あとひとつ積んだら、落っこちてしまうのはわかっていて、必死になるんだけど、自分ではどうしようもなくて
「そんなことをするような子には見えませんでした。とてもいい子でしたのに・・・」
その「・・・」の隙間で彼はもがいていただなんて誰も知らずに。
はかな‐い
【儚い・果敢ない】
《形》頼みにできる確かなところがない。淡くて消えやすい。無常だ。
「そうよね、わたしもあのさくらのはかなさって好き」
ってそういうことじゃないんだよ。
さくらみたいに大手をふって「わたしってはかないでしょ?」なんていってるやつのことをいってるんじゃなくって、誰にもいえないような、自分でもよくわからないような、もう何十年も経って、あのときなんで悩んでいたんだろう?っていうようなそんなはかなさ。
僕だけの世界の悩み。いずれそれは僕だけの悩みなんかじゃない、僕と同じように悩んでいる人がごまんといるんだってことには気がつくんだけど、でも、そんなことは僕はまだ知らないからさ。
苦しいんだよ。
誰にもいえなくて。
言うわけにもいかなくて。
中谷美紀のフェテッシュっていう曲がありましてね。僕はそれをきくたびにどうにも表現しきれないような気持ちになります。
どこで知ったんだかも覚えていないですよ。
君の裸の匂い 夜の桜の森さ
静かに騒ぐ胸は死んでしまう夢を見たよう
ごくごく簡単な言葉で表現すれば、せつないってことになるんでしょうね。
この感覚におちいると、とても苦しくなるけど、忘れちゃいけない感覚だと思うし、この感覚を覚えている限りは僕は人間なんだなぁって思います。