空き家の一ヶ月
約一ヶ月ぶりに地元に戻った。この間、いろんな心配事があった。僕が新地へ赴任したのは大阪で地震があった日だった。そして日本の左側を襲った豪雨。
僕んちの裏山は崩れやすく、実際に過去2回がけ崩れを起こしていた。幸いにも2度とも家屋に被害はなかった。
「大丈夫かなぁ、家は無事かなぁ」
心配してもどうしようもなかった。僕は元来不謹慎にできているのか、心配とは裏腹に、その先を考えると少し楽しくもあった。
もし家が半壊していたら、このまま新地で暮らそう。住む家がないのだから、そのくらい会社も考慮してくれるだろう。
そして、数年後に地元に帰ってきたときにはスモールハウスを建てよう。10畳のメイン部屋にキッチン、バス・トイレ。余計なものはいらない。
掃除は楽になるし、新しい家にも住める。朝日が浴びれるように家の東側には大きな窓をつけよう。西日は遮れるようにいくつかの木を植えよう。
そんな想像をよそに僕の家は無事だった。まあ、無事なら無事でよかった。
だけども、一ヶ月も家をあけるとひどいことになる。しかも梅雨時期の一ヶ月。家の中はカビだらけだった。キッチンの床は真っ白。炊飯器やらトースターやらガスレンジやら全てがカビだらけ。
念のためにと部屋中に置いといた除湿剤などまるで役に立たなかった。
とりあえず床掃除をしなければ足を踏み入れることすらできない。そこにあったスリッパもカビまみれ。いやぁぁ。
閉め切っていた家中の窓をあけ換気をする。扇風機を回し、熱気を追う。
あっという間に汗だく。あっという間に雑巾は真っ黒。人が住まないとこうやって朽ち果ててゆくのだろうなぁ。
半壊の家を想像しながらも、無事であった我が家をきれいにきれいに掃除する。ひと仕事したあとのビールが実にうまかった。