ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

ナルト歌舞伎を観ての感想

NARUTO歌舞伎

忍者の里である木ノ葉隠れの里に育った落ちこぼれ忍者、うずまきナルトの成長を描いたバトルアクション物語。様々な伝承などに材を得た独自の世界観で、日本のみならず海外にも多くのファンを持っている。

今作では、ライバルうちはサスケとの友情と確執や、ナルトに秘められた父母の慈愛などを描き、誰にでも共感できる新作歌舞伎として上演。

歌舞伎独自の演出を生かした新感覚の歌舞伎として新たな境地を開拓します。

 

ということでNARUTO歌舞伎を観てきました。あぁ、ワンピース歌舞伎に続いてナルトも歌舞伎になるのかというのが第一印象。僕はナルトについては全く知りません。同様にワンピースについても全く知らずして舞台を観たのですが、それはそこそこ楽しめました。けど、今回のナルト歌舞伎については、、、うーん、正直、つらかった。

 

まず、これを歌舞伎と呼ぶのかということ。歌舞伎の要素はほぼなく、一幕目の終わりと二幕目のはじめにかろうじて見得を切る程度。鳴り物で歌舞伎っぽくしているといった印象。

 

僕は夜の部の猿之助バージョンをみました。けど、口調がいつもの猿之助のそれとは違う。古典で演じる悪役という感じではなく、あえてナルト寄り(?)の悪役を演じているように感じました。たぶん、古典の悪役っぽく演じると、浮いてしまうのであえてそうしているのだとは思うけど、ちょっと物足りない感じがしました。

 

ナルト歌舞伎

 

四代目猿之助は現代劇を演じるときも歌舞伎役者であることを忘れないようにしているのだといいます。

 

「なぜ歌舞伎役者である自分がこの役を演じるのか。歌舞伎役者である自分がこの役を演じる意味はなにか」

 

果たして巳之助と隼人がこれを歌舞伎役者として演じる意味があったのだろうか?台詞回しなどは2.5次元ミュージカルを観ているよう。あれは絶対、アニメ口調を意識してるぞ。

 

ちなみに猿之助は今月は歌舞伎座にも出演していてかけもち。昼の部のうちはマダラは片岡愛之助が務めます。

 

テーマとしてはふたりの友情とか成長ってことなんだろうけど、それも響いてこなかった。なぜだろう。ナルトを知らないから?この世代じゃないから?

 

僕は今回のナルト歌舞伎のようにケレン(ナルトに限ってはケレンといっていいのかはわからないけど)を重視した歌舞伎を観るとどうしても三代目が作り上げたスーパー歌舞伎と比較してしまう。あれと比べるとどうしたって劣ってしまうのだ。

 

だから比べちゃいけないんだっていうこともわかる。でも、僕の意識がついついそうさせてしまうんだよ。あの美しさや品格を求めてしまうんだよ。この作品は表面的なかっこよさを求めてしまったのかなぁ。

 

こういった舞台をわかりやすくするためには言葉で語るのが一番てっとり早い。そうすると僕はとたんに物足りなさを感じる。言葉がなくても、そこに役者が佇んでいるだけで、内面までを表現するなんて、やっぱり難しいことなんだろう。でも、言葉にされちゃうと、冷めちゃうんだよね。あー、それ言わなくてもなんて思ってしまう。

 

批判めいた感想になりましたが、歌舞伎ファンからすれば物足りなさを感じるでしょうが、ナルトファンからすれば、きっと楽しい舞台でしょう。いちどは観ておくといいかなと思います。