「アンソロジー 捨てる」を読んでの感想
アンソロジーとは異なる作者による作品集のことです。この本のテーマは「捨てる」
アミの会(雨の会へのリスペクトだそうです)という女性作家だけの集まりの会(お茶したりご飯食べたりするのだそうです)から生まれたのがアンソロジーです。
- 箱の中身は / 大崎 梢
- 蜜腺 / 松村 比呂美
- 捨ててもらっていいですか? / 福田 和代
- forget me not / 篠田 真由美
- 四つの掌編 / 光原 百合
- お守り / 新津 きよみ
- ババ抜き / 永嶋 恵美
- 幸せのお手本 / 近藤 史恵
- 花子さんと、捨てられた白い花の冒険 / 柴田 よしき
「捨てる」と聞いて僕が真っ先に思いつくのが「モノを捨てる」ということ。単純ですね。そういった意味で「forget me not」がいちばん好きでした。
一軒家に住む両親が亡くなり、その後片付けに追われる。父は多趣味で数年ごとにその趣味を替える。趣味のモノは一切捨てず、きれいに収納して押入れの中へ。
それとは正反対に母の持ち物はほぼないといってよい状態。残されたものといえば、ひとつの壺。中になにが入っているかわからない。取り出したければ、それを壊すしかない。骨董屋に持っていくとその壺は「忘れな壺」だという。その壺をどうすべきか。思いは巡る。
実家の片づけを経験したことがある人なら、感慨深く読めるのではないかと思います。
その他の感想。「箱の中身は」は中身がわからないままに終わったほうが面白かったんじゃないかなって思います。ズンドコベロンチョみたいに。あっさりと中身が判明して拍子抜け。
「お守り」はモノの捨て時を考えさせられます。とくにお守りの類は難しい。まあ、単なるお守りの話ではないのですが・・・。
「ババ抜き」は女性同士の駆け引きが面白いです。というか、こわいです。でも、こんな関係はどこにでも転がっていそうにも思います。
「幸せのお手本」も同じような意味で面白い。自分としてはうまくやっていたのに、他の人から見れば・・・。気が付いていない人ほど痛々しいものはない。
柴田よしきさんはハードボイルドものの小説が面白くて、よく読んでいました。本書にある「花子さんと、捨てられた白い花の冒険」は最近よくあるような(よくはないか)ゾワッとする事件もの。そう都合よくはいかないだろうと思いながらも、その展開に引き込まれました。
アンソロジーシリーズは他にもあるようなので読んでみたいと思います。