ミニマム コラム

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三谷歌舞伎「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち」の感想

歌舞伎

六月の歌舞伎座夜の部は三谷幸喜の13年ぶりとなる歌舞伎「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち」です。

 

原作は漫画でみなもと太郎さんの「風雲児たち」です。残念ながら僕は読んだことはございません。1979年に第一部が開始されたそうですから約40年前の漫画ですね。

 

松本幸四郎、市川猿之助、片岡愛之助、松本白鸚といった面々でございます。幸四郎さんと猿之助さんのコンビは最近、やたらと多いですね。八月にはもはや恒例となっている「弥次さん喜多さん」もありますし。

 

物語をざっくりいえば、船で遭難した一同がロシアにたどりついて、さあ、どうやって日本に帰ろうか?ということを描いた物語です。

 

最初は大勢いた仲間もひとりまたひとりと死んでゆく。ロシアの地をさ迷って10年。ようやく日本に帰れるかと思いきや・・・。と、まあ、そんな話です。

 

「ああ、これってヤマトタケルだな。もしくは俊寛か」なんて思いましたね。

 

以下少しネタバレ。

 

歌舞伎

 

猿之助演じる庄蔵はロシアの極寒のせいで足に凍傷を負います。足は次第に腐っていき、切断するしかない事態に。切断した状態で日本に帰るとなれば仲間の足手まといになりますからロシアに残るしかない。

 

実際にはお金の問題やロシアの思惑なども絡んでくるのですが、まあそれはおいといて。

 

あと少しで日本に帰れるというのに日本に帰れないという状況。

 

ヤマトタケルも同じでした。あと少しで都に帰れるというタイミングでイノシシと格闘し足にケガを負います。歩くこともできず都を目前に命を落とします。

 

「翼が欲しい」というヤマトタケルの思いが、クライマックスの白鳥の姿の宙乗りとなります。

 

その場面を思い出したんですね。今回、三谷歌舞伎でその役を演じていたのも猿之助ですし。これが偶然なのかどうかはわからないですけど。

 

新作歌舞伎を上演するとついつい「これは歌舞伎なのか?」なんてことを思ってしまいます。三谷さんは今回はあえて歌舞伎を意識しなかったといいます。歌舞伎役者が演じれば、歌舞伎になるから、と。

 

とってつけたように見得を切ったり、歌舞伎口調になったりするのがちょっと違和感あり・・・ですかね。

 

歌舞伎役者以外にも出演者がいらっしゃいました。八嶋智人さん。すげぇなぁって思いました。舞台上で生き生きと輝いている感じ。もともと劇団の人なんでしょうかね?

 

全く意識していなかったのですが、八嶋さんの世界に見事に引きずり込まれました。

 

多分、再演はされないと思うので見といたらいいと思います。